2004年7月24日、北海道地方版の読売新聞。

(1面記事)
道新元次長「着服は1億」
広告売上金 営業部内で裏金化 室蘭支社
 北海道新聞室蘭支社の元営業部次長(55)が広告売上金を着服したとされる問題で、元次長が15年以上にわたり総額1億円以上を着服し、一部を同社幹部や部下に
分配していたことが23日、元次長など複数の関係者の証言で明らかになった。
 元次長は「正規の経費では捻出できない交際費などに充てていた」と証言しており、北海道警では、部内で組織的な裏金づくりが行われていた可能性もあるとみて
業務上横領の疑いで関係者から事情を聞いている。証言によると、元次長がプールしていた着服金は、1980年代後半以降の支社営業部の在籍者のうち、営業部長や部
次長など幹部や部員ら少なくとも8人に計約1300万円が渡っていた。中には、5万円など一定額を毎月渡したり、接待ゴルフなどの際に「都合して欲しい」などと要請
され、その都度現金を渡したりするケースもあった。元次長はこうした分配について、「着服金から経費を捻出していたということは、みんな知っていたと思う。こう
した手法は上司に教えてもらった」と証言。 また、1990年秋から99年秋ごろまで計600万円を受け取っていたという部次長経験者も、「付き合いでパーティー券を購入
するなど、営業には多額の交 際費がかかるが、正規に請求できる経費は足りず、工面してもらっていた」と話している。
 道新は、5月下旬、1994年8月以降、総額6000万円を着服したとして元次長を懲戒解雇し、道警に被害届を出していた。
 北海道新聞社経営企画室の話「これについては、すでに北海道新聞の紙面で調査結果を報道し、室蘭署に被害届を出しました。
現在、事実解明を警察の捜査にゆだねており、当社として、必要な措置があれば対応いたします」
(35面記事)
金は上司、部下に分配
道新元次長着服
「出所知っていたはず」
 「大なり小なり、ほかでもある慣習だと思っていた」――。15年以上にわたり上司や部下の交際費を工面してきた北海道新聞室蘭支社の元営業部次長 (55)は、
23日、読売新聞社の取材に、「裏金づくり」の手口を詳細に明らかにしながらも、「部内のみんなも、金の出所はわかっていたはず」と複雑な胸 の内をのぞかせた。
■端緒
 ――着服のきっかけは。
 昭和の終わりか平成の初めごろ(広告主の)ホテル側からパーティー券を買わされた。経費で落ちないので、コマって先輩社員に相談したら「広告代理店に相談しろ」
と教えてくれた。
 ――どうなったのか。
 代理店はチケット代をくれ、「代わりに広告カードを返してくれ」と言ってきた。広告カードとは、広告の掲載日や代金などの情報が書かれたもので、代理店 が新聞社
側に広告原稿と一緒に提出する。これを返すということは、広告代金を本社に報告しないということ。その代金を広告代理店から直接もらった。「どこの社でもやっている
ことだ」と言われ、その後、本格的にやるようになった。
 ――先輩が教えてくれたということは、社内の慣習だったのか。
 そう思う。
■使途
 ――横領した総額は。
 1億円を超えているだろう。伝票が残っていた分だけで6000万円弱ある。
 ――そのうち、いくらを同僚に分配したのか。
 約3分の1は、当時の営業部長や部員ら8人に渡したり飲食に使ったと思う。
 ――なぜか。
 営業部の年間予算は全部で65万円しかなく、大きな接待があれば半分は一回で消えてしまう。(交際費を工面した)結果、1999年からの5年間で、4階も支社の売上高を
更新する好成績を残した。
 ――どのくらい渡していたのか。
 二人の上司から「広告主とのゴルフや飲み代などで必要なので、用意してくれ」といわれて計35万円を渡したことがある。月々5万円を何年も渡したこともある。その
ほか、毎月40−50万円ぐらい飲み代に使っていた。仕事上の会合にも使ったが、内輪の飲み会にも使った。
 ――彼らは金の出所を聞かなかったのか。
 聞かない。(どこからくるか)わかっていたからだろう。私が自腹で万単位の金を使っていたら生活できなくなる。職場で順番に机の下で渡していた。喫茶店で3人の
同僚に5万円ずつ一度に渡したこともある。
■組織性
 ――ほかの支社ではないのか。
 上司の一人は、道東地方にある別の支社時代、広告主のイベントで同様の(カードを抜く)手口で100−200万円を手当てしていたと言っていた。どこでもある慣習だと
思う。
 ――なぜ、長年発覚しなかったのか。
 会社がチェックしないから。広告カードは通し番号を振っているので、途中のカードが抜けていれば、普通はおかしいと思うはずだが、ほとんど聞かれない。 問い合
わせがたまに来ても、「後でカードを送る」と言えば、それっきりになる。室蘭支社だけノーチェックだったわけではないから、ほかでもできる。』
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